糖尿病網膜症とは?
糖尿病は、食事によって体の中に取り込んだ栄養(糖分)をうまく利用することができなくなって、血管内に糖分がたまる病気です。初期にはほとんど症状がなく、かなり悪化しても症状がでないことがあります。
糖尿病によって起こる身体の異常は、おもに糖分が血管の壁を傷つけることで起こります。傷ついた血管が詰まったり、血管から血液の成分が漏れたりして病気になります。まず、網膜や腎臓などの小さな血管が集まっている場所で異常が起こり、網膜症や腎症になります。進行すると、心臓や頭の大きな血管にも異常が生じて、命の危険のある心筋梗塞や脳梗塞・脳出血などが起こります。
糖尿病網膜症は、糖尿病になってから約5~10年で起こるといわれています。初期はほとんど無症状ですが、進行すると失明することもあります。最近糖尿病の患者さんは増えてきているため、現在、成人の失明原因の上位に位置しています。
糖尿病網膜症の原因
網膜は眼球の内側に張付いている薄い神経の膜で、明るさや色を感じる働きがあります。糖尿病の影響で網膜の血管がもろくなって出血を起こしたり、血管が詰まって血液の流れが悪くなったりすると、網膜が栄養不足の状態になります。これが糖尿病網膜症の起こりはじめです。この時期には、少しかすんだり、飛び物が見えたりすることがありますが、自覚症状のないことも多いです。
さらに網膜症が進行すると、網膜に栄養を送るために新しく血管ができます(新生血管)。新生血管はもろく破れ易く、血液の成分が漏れて膜を作ったり(増殖膜)、破れて出血を起こしたりします。このころになると視力が低下し、かすみや飛び物もひどくなります。さらに放置すると眼内に大きな出血(硝子体出血)を起こしたり、増殖膜が網膜を引っ張って網膜剥離を起こしたりします。
糖尿病網膜症の治療
糖尿病網膜症は治療の方法の違いによって3つの病期に分けられます。
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- 単純糖尿病網膜症
- 初期の網膜症で特に治療の必要はありません。血糖のコントロールが良くなれば自然に良くなり、視力に影響することもありません。
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- 前増殖糖尿病網膜症
- 部分的に血管が詰まって血液の流れが悪くなり、網膜が栄養不足を起こす時期です。この時期には、新生血管発生を抑えるためにレーザー光線による治療(網膜光凝固)が必要です。この時期になると血糖のコントロールを良くしてももとには戻りません。治療せずに放置すると病気は進行していきます。
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- 増殖糖尿病網膜症
- 網膜に新生血管が生じて増殖膜や網膜剥離がおきる時期です。放置すると失明の危険があります。手術で増殖膜を取り除いて網膜剥離を直す必要があります。